副業で持ち家を事業経費としたい! 確定申告(青色決算書)の書き方
在宅で副業などで収入を得た場合、自宅の一部を事業所として経費として計上することができます。賃貸の場合は、家賃から算出をすることが簡単ですが、持ち家を経費としたい場合は、計算がややこしくて、ネットで調べても、なかなか青色決算書を完成させられるような有用な情報が上がってきませんでした。
そこで、実際の計算方法や青色申告の記載方法について、詳しく解説していこうと思います。(青色申告ソフトで実際出力してみたり、税務署へ行ったり国税庁へ電話相談して計算方法や書き方が問題ないことは確認しました。)
ただし、次の条件を満たす方のみが対象の記事になります。それ以外の方に関しては、この限りではない可能性が高いので、あらかじめご留意ください。
- 数年前に購入した一軒家をずっと自宅として使用していた
- 今年から一部を事務所として転用した
- 今年から開業して青色申告を行なう方
同じような境遇の方は、きっとこれを読めば、確定申告に必要な青色申告決算書や、固定資産台帳を完成させることができるはず!
ちなみに…「よし!いざ確定申告するぞ!」という時期に、絶対に忘れそうな内容なので、この記事をつくった目的の半分は、わたし自身のためですw
持ち家の一部を事業所とした場合に必要な書類
持ち家の一部を事業所とした場合は、以下の書類に経費などの金額を記載していく必要があります。
- 青色申告決算書
- 固定資産台帳
- 仕訳帳
- 経費帳
このうち、青色申告決算書のみ税務署へ提出が必要です。それ以外については、自宅で保管する必要がある書類になります。
なお、事業規模がそこまで大きくなく、固定資産が事務所のみであれば、固定資産台帳は特に不要とのことでした。ただ、特に記載には手間もかからないので用意しておいた方が無難かと思います。
経費や各書類に必要な計算方法
色々と記載する箇所が多く、何をどう書いたらいいのか、悩むかもしれませんが、理屈を理解すれば結構シンプルでした。
経費などの計算に、必要な情報としては以下の情報が必要です。
1.持ち家を建てた日
2.建物の取得価格(土地代は除くが初期費用などは含めてOK)
3.建物の材質
4.床面積(m2)
5.事業として使用する割合
6.事業開始日(持ち家を事務所として転用する日)
これらの情報から、以下を算出して、それぞれの値を青色申告決算書や固定資産台帳に記載していけばOKです。
7.普通償却費
8.耐用年数
9.償却率
10.経費
11.転用時の未償却残高
はい、早速難しい言葉が出てきましたね…心が折れそうですよね。分かります‥でも意外にシンプルなので、サクサクいきましょう。
これから、具体的な例で見ていきます。まずは①~⑥を埋めていってください。(ローン控除の書類や住宅を購入した際の重要書類などをみれば、埋めていけるはずです。)
1.建てた日:2015年4月1日
2.建物の取得価格:2000万円
3.木造
4.床面積:100m2
5.事業割合:10%
6.事業開始日:2020年1月1日
普通償却費・耐用年数・償却率
「7.普通償却費」は、以下の式で求めることができます。
普通償却費=償却の基礎になる金額×償却率×使用した月数/12
ほら、、いきなりムズイ話来たやん。「償却の基礎になる金額」って?
「償却の基礎になる金額」は「2.建物の取得価格」でいいんだって。厳密には異なる場合があるかもだけど、私たちには関係なさそうだから今回は触れないでおこうw
あと…「9.償却率」???なにそれw聞いたことないし…
だよねwはい、私も全然わかりましぇんwでも、この部分は単純に固定の値なので、対応表みて探してさらっと入れこもう!
償却率は、耐用年数によって変わってきます。今回の例だと、「3.木造」の住居用なので、下記URLから、「8.耐用年数」は22年ということが分かります。
【確定申告書等作成コーナー】-耐用年数(建物/建物附属設備)
そして、耐用年数が22年の場合は、下記URLの表から、22年の「9.償却率」は 0.046だと分かりました。
※定率法とかうんぬん色々とありますが、、、とりあえず、定額法償却率を見るそうです。(わけわかめwそうゆうものだと思いましょう。。)
No.2109 新築家屋等を非業務用から業務用に転用した場合の減価償却|所得税|国税庁
そこで、先ほどの「7.普通償却費」の計算式に入れてみましょう。
2021年の申告で「6.事業開始日:2020年1月1日」から12か月間(1年間)使用した場合、以下のような計算式になり、はい、「7.普通償却費」を求められました!
7.普通償却費
=償却の基礎になる金額×「9.償却率」×使用した月数/12
=「2.建物の取得価格:2000万円」×0.046×12/12
=92万円
経費の求め方
経費は「7.普通償却費」に、「5.事業割合」をかけます。これは簡単ですね!
※本当は「特別償却費」とやらを足した額の割合なのですが、特別のことがない限り関係ないそうなので、割愛してます~。
10.経費
=「7.普通償却費:92万円」×「5.事業割合:10%」
=92万円×10/100
=9万2000円
転用時の未償却残高の求め方
おっと、計算はこれでラストやーん!
そうそう!まぁ、ここでも難しそうな単語出てくるけど、パパっと飛ばしていこう!
……難しい単語…また出てくるんかーいっっ
転用時の未償却残高の計算式は下記です。
転用時の未償却残高=「建物の取得価格」ー「建物の取得価格」× 0.9 × 耐用年数の償却率 × 経過年数
「耐用年数の償却率」は、さっきの「9.償却率」でいいんでしょ?
それが…転用前は事業用ではなく住宅として使ってたから償却率の値が変わるみたいなの…
ただ、これも固定なので、ご安心ください。まず、木造住居の耐用年数は、さっきと同じで、下記の一覧から22年です。
【確定申告書等作成コーナー】-耐用年数(建物/建物附属設備)
住宅として使用していた場合は、あまり消耗していないと考えられるので、これに1.5倍の年数で計算するそうです。なので、22年×1.5=33年の耐用年数として、下記の一覧から選びます。一覧から33年の償却率は、0.031ということが分かりました。(定額法で見る!)
No.2109 新築家屋等を非業務用から業務用に転用した場合の減価償却|所得税|国税庁
※一覧では木造住居用が22年なのに・・・なに??耐用年数が変わるってどゆこと??とかいう疑問は置いといて…そういうものとして、ただ無心に入れ込んでいってくださいw
経過年数ですが、「1.建てた日:2015年4月1日」から「6.事業開始日:2020年1月1日」まで4年9ヵ月が経過しているので、5年として計上します。
※1年未満の端数があるときは、6ヵ月以上は+1年とし、6月に満たない場合は切り捨てるようです。
No.2109 新築家屋等を非業務用から業務用に転用した場合の減価償却|所得税|国税庁
www.nta.go.jp
ということで、それぞれの値を入れて求めることができます。
11.転用時の未償却残高
=「建物の取得価格」ー「建物の取得価格」× 0.9 × 耐用年数の償却率 × 経過年数
=2000万円ー(2000万円× 0.9 × 0.031 × 5)
=2000万円ー279万円
=1721万円
青色申告決算書への書き方
確定申告に必要な青色申告決算書への書き方について説明していきます。記載が必要なのは、1ページ目の「損益計算書」、3ページ目の「減価償却費の計算」、4ページ目の「貸借対照表」の「建物」部分になります。初年度と2年目以降で少し書き方が異なるので注意しましょう。
※正確に言うと、「貸借対照表」の事業主貸・事業主借の計算にも影響してきますが、少しややこしいので、整理してから後日説明していきます。
青色申告決算書への記載には、下記項目を使っていきます。
2.建物の取得価格
4.床面積
5.事業割合
6.事業開始日
7.普通償却費
8.耐用年数
9.償却率
10.経費
11.転用時の未償却残高
いよいよ青色申告決算書に書き込む段階だよ。頑張って!
減価償却費の計算
3ページ目の減価償却費の計算部分に下記内容を入れていきます。(赤枠の左から順に説明しています。)
・名称等⇒事務所 兼 自宅 ※分かる名称であれば何でもOK
・面積⇒「4.床面積」×「5.事業割合」
・償却方法⇒定額
・耐用年数⇒「8.耐用年数」
・償却率⇒「9.償却率」
・本年中の償却期間⇒12/12
・本年分の普通償却費⇒「7.普通償却費」
・割増償却費 ⇒空白
・本年分の償却費合計⇒「7.普通償却費」
・事業専用割合⇒「5.事業割合」
・本年分の必要経費算入額⇒「10.経費」
・未償却残高⇒初年度:「11.転用時の未償却残高」ー「7.普通償却費」、2年目以降:去年の未償却残高ー「7.普通償却費」
・摘要 ⇒空白
※未償却残高のみ、初年度と2年目以降の値が異なりますが、それ以外の項目は事業割合などが変わらない限り、基本的に固定です。
賃借対照表
賃借対照表では、「資産の部」にある「建物」の部分に値を記載します。初年度と2年目以降で書き方が異なるので注意しましょう。
<初年度>
・1月1日(機首)⇒0
・12月31日(期末)⇒「11.転用時の未償却残高」ー「7.普通償却費」
<2年目以降>
・1月1日(機首)⇒去年の未償却残高
・12月31日(期末)⇒去年の未償却残高ー「7.普通償却費」